吉田修一って
すでに人気作家らしいね。知らなかった。遅まきながら、右の本を読んでみたら、これがメチャクチャおもしろい。大胆な省略法が効いていて、想像力を止めどなく刺激する。小説の醍醐味だ。
連作6編中5編で語り手を務める青年が、最後の1編で突如、廃人同様の世捨て人になってしまい、主人公の座を弟に譲る。説明はまったくないのだが、なぜかその心理の動きが読んでいてストンと腑に落ちる。すごい筆力である。
すっかり気に入って、他の本もごっそり買い込んだ。ほとんどが文庫化されているので助かる。しかし、初期作品はやっぱりダメ。省略の思い切りが悪いし、もったいぶるかと思えば妙にくどい説明文が割り込んできたりする。
それが芥川賞受賞以後、みるみる上達する。ほめられれば、自信がつく。自信がつくと、眠っていた才能も目を覚ます。同じ都会風俗を扱っても、97年の「最後の息子」と5年後の「パレード」じゃ、読ませる力が段違いだ。
ところで、初期作品中とりわけつまらない「Water」を、インディ系のプロデューサーが作者自身のメガフォンで映画化したんだってね。ロスのホテルで読んで一気に魅了された、というようなことをサイトに書いているが、映画関係者の小説の読み方って、オレとは違ってるんだろうか。